あなたに好きになりやすいワインのタイプを約5分で探せます(無料・全30問)。ワイン診断はこちら
グラスに注がれた二つの赤ワイン。どちらも濃い紫で、縁まで色が詰まっています。香りを取ると、どちらにも黒い果実がある。ここでシラーとカベルネ・ソーヴィニヨンを取り違える方は、少なくありません。
けれども、シラーとカベルネ・ソーヴィニヨンの違いは、落ち着いて香りを取れば分かります。決め手はひとつだけです。黒胡椒とスミレならシラー、カシスと杉ならカベルネ。 香りの方向が、そのまま品種の名前になります。
恵比寿で一日ひと組のレストランを営み、毎月ワイン会を開いている側から見ると、この二つは料理の選び分けでも使い道が違います。順にお話しします。
結論:シラーとカベルネ・ソーヴィニヨンの違いは、香りではっきり分かれます。 どちらも色の濃い力強い赤ですが、シラーは黒胡椒やスミレのようなスパイシーで華やかな香りを持ちます。 カベルネ・ソーヴィニヨンはカシスや杉、ミントのような香りと、きめの細かい強い渋みが特徴です。色はどちらも濃く、見た目では見分けがつきません。 スパイスを使った料理にはシラー、シンプルな赤身肉のグリルにはカベルネが噛み合います。
あわせて、ワイングラスを形から選ぶとワインペアリングの組み立て方もご覧ください。
ひと目で分かる違い
まず、全体を並べます。香りの言葉と味わいの軸は、ワイン診断で使っているものと同じ語にそろえました。
| 要素 | シラー | カベルネ・ソーヴィニヨン |
|---|---|---|
| 原産地 | フランス・北ローヌ | フランス・ボルドー |
| 香りの系統 | スパイス(黒胡椒)、花(スミレ)、黒い果実 | 黒い果実(カシス)、樽・ロースト。杉、ミント |
| 酸味 | 中からやや低い(冷涼な産地では引き締まる) | 中からやや高い |
| 甘み | 残さない | 残さない |
| 渋み | 中から多い。きめはなめらか | 多い。きめが細かく、若いうちは硬い |
| ボディ | ミディアムからフル | ミディアムからフル |
| 色 | 濃い紫から黒に近い | 濃い赤紫 |
| 別の呼び名 | オーストラリアではシラーズ | 産地が変わっても呼び名は同じ |
診断では、この二つを「黒胡椒とスパイス」(シラー)と「カシスと力強さ」(カベルネ・ソーヴィニヨン)という言葉で分けています。5分のワイン診断では、赤5タイプのどこに立っているかが分かります。
香りの違い 胡椒とスミレ、カシスと杉

二つの品種を分ける香りを、もう少し細かく見ます。
シラーの黒胡椒は、冷涼な土地に残る
シラーの特徴は、黒胡椒の香りです。挽きたての黒胡椒を思わせる、鼻の奥に抜ける刺激。そこにスミレのような花の香りが重なります。黒い果実、ブラックベリーやブルーベリーの香りも持っていますが、胡椒とスミレのほうが品種の印です。
この胡椒の香りは、冷涼な気候で残りやすいという性質があります。原産地である北ローヌは、ローヌ川の上流にある細長い産地です。斜面が急で、気候は冷涼。だからエルミタージュやコート・ロティのシラーには、胡椒の香りがはっきり出ます。
逆に、温暖な土地で育てると胡椒は後ろに下がり、果実の甘やかさが前に出ます。同じ品種でも、産地によって表情が大きく変わるのです。産地ごとの違いは、シラーとシラーズを扱った記事に詳しくまとめました。
カベルネの青い香りは、血筋から来ている
カベルネ・ソーヴィニヨンの香りは、カシスです。黒すぐりの、少し青みを帯びた凝縮した果実の香り。そこに杉や鉛筆の芯、ミントのような香りが重なります。
この青い方向の香りには、理由があります。カベルネ・ソーヴィニヨンは、ソーヴィニヨン・ブランとカベルネ・フランが自然に交わって生まれた品種です。白ぶどうの名が赤ワインの代表品種に入っているのは、この血筋によるものです。ソーヴィニヨン・ブランの青いハーブの香りが、わずかに受け継がれています。品種としての連なりは、カベルネ・ソーヴィニヨンを扱った記事でも触れています。
ですから、香りの覚え方はこうなります。スパイスの方向に振れていればシラー、青さと杉の方向に振れていればカベルネ。 どちらも黒い果実を持っているので、果実そのものは手がかりになりません。
渋みと酸の違い
香りで分からないときは、口に含んだあとの渋みの質を見ます。
カベルネ・ソーヴィニヨンの渋みは、きめが細かく、口の奥でぐっと締まります。粒が小さく果皮が厚い品種のため、タンニンの総量が多くなります。若いうちは角が立っていて、硬く感じられることもあります。
シラーの渋みは、なめらかで丸い方向です。量はカベルネに近いこともありますが、口の中での当たり方が違います。締めつけるのではなく、覆うように広がります。
酸は、カベルネのほうがやや高めです。シラーは中からやや低めで、冷涼な産地のものでは引き締まります。この差が、料理を合わせるときの効き方の違いになります。
シラーとシラーズ
もうひとつ、名前の話を整理しておきます。
シラーとシラーズは、同じ品種の別の呼び名です。 フランスではシラー、オーストラリアではシラーズと呼びます。品種が違うわけではありません。
ただ、呼び名が変わると味の傾向も変わります。これは気候の違いによるものです。
| シラー(フランス・北ローヌ) | シラーズ(オーストラリア) | |
|---|---|---|
| 気候 | 冷涼 | 温暖 |
| 香り | 黒胡椒、スミレが立つ | 果実が濃く、甘やかな方向へ |
| 味わい | 酸と渋みが引き締まる | 厚みがあり、丸い |
南ローヌでは、シラーはグルナッシュやムールヴェードルと組み合わせて使われます。オーストラリアには、カベルネとシラーズを組み合わせたワインもあります。骨格のあるカベルネに、シラーズの果実味が重なる組み合わせです。混ぜるという設計については、ブレンドを扱った記事でお伝えしています。
テイスティングでの見分け方
ブラインドで出されたときに、この二つで迷う方は多いと思います。迷う理由は、はっきりしています。どちらも色が濃く、どちらも黒い果実の香りを持っているからです。
ですから、共通点を手がかりにしないことです。順番としては、こう見ています。
1. 色を見る。どちらも濃いので、ここでは決めない。縁がやや紫寄りか、赤紫寄りかだけ覚えておく
2. スワリングせずに香りを取る。黒胡椒が立てばシラー、カシスと青さが立てばカベルネ
3. スワリングしてもう一度取る。スミレが出ればシラー、杉や鉛筆の芯が出ればカベルネ
4. 口に含む。きめが細かく奥で締まる渋みならカベルネ、なめらかで丸く覆う渋みならシラー
5. 酸を見る。やや高めならカベルネ、やや低めならシラー
香りを二度に分けて取るのは、変化そのものを情報にするためです。グラスを回す前と後で何が増えたか。そこに品種の印が出ます。
資格試験の勉強でこの二つを扱う方には、ブラインドテイスティングの進め方の記事とワインエキスパートの試験を扱った記事が参考になるはずです。産地から覚え直したい方は、フランスのワイン産地をまとめた記事もあわせてご覧ください。
料理のスパイスで選び分ける
厨房でこの二つを選び分けるとき、私が見ているのはスパイスを使うかどうかです。
| 料理 | 選ぶ赤 | 理由 |
|---|---|---|
| 黒胡椒をきかせた肉料理 | シラー | 胡椒の香りが同じ方向で響き合う |
| クミンやコリアンダーを使った料理 | シラー | 香辛料の複雑さに、スパイスの香りで並ぶ |
| 炭火で焼いたラム、ジビエ | シラー | 燻した香りとスパイスがつながる |
| 牛の赤身をシンプルに焼いた皿 | カベルネ・ソーヴィニヨン | 脂とたんぱく質がタンニンと結びつき、渋みが和らぐ |
| 熟成肉のステーキ、塩と胡椒だけの仕立て | カベルネ・ソーヴィニヨン | 肉の香りの強さが、カシスと杉に釣り合う |
分け方をひと言にすると、香辛料で押す皿にはシラー、素材で押す皿にはカベルネです。シラーはスパイスの側から料理に入り、カベルネは渋みの側から肉を受け止めます。
温度の出発点は、どちらも16〜18℃です。渋みが硬く尖って感じられるときは、2℃上げます。温度が上がると甘みと厚みが出て、渋みの感じ方が変わることがあります(タンニンそのものが溶けてなくなるわけではありません)。数値の全体像はワインの適温を扱った記事にまとめました。
どちらが好きかで、あなたのタイプが分かる
ここまでを、好みの側から裏返します。
| ふだんの好み | 近い品種タイプ |
|---|---|
| 黒胡椒、燻した香り、スパイスのきいた料理 | シラー(黒胡椒とスパイス) |
| カシス、ビターチョコレート、引き締まった渋み | カベルネ・ソーヴィニヨン(カシスと力強さ) |
| 香りの華やかさを楽しみたい | シラー |
| 口のなかが引き締まる感覚が心地よい | カベルネ・ソーヴィニヨン |
赤は全部で5タイプあり、この記事の二つに加えて、ピノ・ノワール(赤い果実と軽やかさ)、メルロ(プラムとまろやかさ)、ネッビオーロ(バラと力強い酸)があります。渋みの弱い順に並べると、ピノ・ノワール、メルロ、シラー、カベルネ・ソーヴィニヨン、ネッビオーロです。
自分がどこに立っているかは、5分のワイン診断で確かめられます。結果に合わせた品種ガイドは、公式LINEでご案内しています。
並べて飲むと、違いは一瞬で分かる
診断の結果画面には、こう書いてあります。これはまだ仮説です。グラスを並べて飲み比べて、はじめて分かります。
香りの説明を読んで覚えようとすると、黒胡椒もカシスも、言葉のまま頭に残ります。ところが二脚を並べて続けて嗅ぐと、「こちらに胡椒がある」と体のほうが先に気づきます。北ローヌのシラーとボルドーのカベルネ。価格帯をそろえて並べると、差が際立ちます。
Na Team Labでは、毎月テーマを立ててワイン会を開いています。コース料理とともに6杯を合わせる会と、10〜15本を並べて立食で楽しむ会の2つの形式があります。これまでの会では、7割近くの方がお一人で参加されています。開催は19時から21時半が多く、土日も平日もあります。
まとめ
シラーとカベルネ・ソーヴィニヨンの違いは、香りの一点に集約できます。
- シラーは黒胡椒とスミレ、カベルネ・ソーヴィニヨンはカシスと杉。これが決め手です
- どちらも色が濃く、黒い果実を持つため、色と果実では見分けられません
- 渋みの質も手がかりです。カベルネはきめが細かく奥で締まり、シラーはなめらかで丸いです
- シラーとシラーズは同じ品種です。冷涼な産地では胡椒が立ち、温暖な産地では果実が濃くなります
- 香辛料で押す皿にはシラー、素材で押す皿にはカベルネが噛み合います
- 渋みが尖るときは2℃上げます。どちらも出発点は16〜18℃です
次に濃い赤を手にしたら、スワリングの前にひと嗅ぎしてみてください。胡椒があるかどうか。それだけで、半分は答えが出ています。
よくある質問
どちらが重いですか?
どちらもミディアムからフルボディで、重さの幅は重なります。産地による差のほうが大きく、温暖な土地のシラーズやカリフォルニアのカベルネは厚みが出ます。重さで選び分けるより、香りで選ぶほうが確かです。
シラーとカベルネがブレンドされることはありますか?
あります。オーストラリアにはカベルネとシラーズを組み合わせたワインがあり、カベルネの骨格にシラーズの果実味が重なります。南ローヌでは、シラーはグルナッシュやムールヴェードルと組まれることが一般的です。
ブラインドテイスティングで迷ったら、何を見ればいいですか?
黒胡椒とスミレの香りが立てばシラー、カシスと杉やミントの香りが立てばカベルネ・ソーヴィニヨンです。渋みの質も手がかりになります。カベルネはきめが細かく口の奥で締まり、シラーはなめらかで丸く感じられます。
一杯の違いを、料理とともに確かめる。
少人数のワイン会で、グラス、温度、料理との関係を実際に比べます。

